神仏を巡りながら「街の地層」も感じる旅

―お線路さんの企画は、神社だけでなく、街にも注目していますね。

 

オマモニアとして、日本全国津々浦々、神社仏閣を参詣して気づいた事…それは「楽しさや面白さ・刺激は案外足元にあるものだ」という事です。

 

勿論、旅先にも魅力的な物や感動的な事はあります。大切なのは「視点と知点を変えてみる」という事です。視点は「観る角度」、知点は「知識の角度」の事です。この二つを意識して見直してみると、いつも見ている風景にも、そこに潜む楽しさや感動が見えてきます。そんな気づきの"きっかけ"になって欲しい!と思い制作した冊子が、この『お線路さん公式プレイブック』です。


 

―第一段階で東京・山手線を題材にしたのは?


 

山手線は誰もが知っている沿線で、東京に住んでいたら誰もが利用している路線ですよね。でも実際には降りたことない駅が沢山あったり、沿線の有名どころも写真や映像では見ていてもわざわざ行かなかったりする。僕も東京に住み始めて30数年経ちますが、行ってみて初めて知ることって意外と多いんですよ。東京って面白くて、例えば国会議事堂前には「国会前庭」っていう巨大な庭があるんです。都内の超一等地にあるにも関わらず、その日は僕と水浴びしていた裸のおじさんがいただけでした(笑)そこには「三権分立の時計」だとか、「日本水準原点(日本の高さの基準点)」があったりする。そういう風に、街を歩くと東京に住んでいるのに東京のことを知らないことに気づかされるんです。

 

それから山手線は降りる駅によって、その街の雰囲気・その街にいる人種の違いを感じられるのも面白いですね。生活感があって親しみやすい巣鴨・大塚・池袋、国際色豊かで雑多な神田・秋葉原・御徒町、ビジネス感の強い東京・有楽町・新橋、ファッション感度の高い渋谷・恵比寿・目黒等…本書にも「二十四方位図」というのを書いたのですが、僕の見立てでは大体3駅毎でガラっと人種・雰囲気が変わる印象です。

 

こんな風に、「お線路さん」を起点に、普段足元にあるけど行かない駅に降り立ってもらったり、普段歩かない場所を歩いたりすると、街の意外な面白さを発見してもらうことができると思います。まず自分の足元(地元)を楽しんで、日常の中にある物や事、視点と知点を変えて楽しめる感度を磨ければ、きっと旅に出かけた時にも想像を超える自分だけの楽しみ方が出来るのではないでしょうか。

31の神社の同意と協力を得て初めて生まれたプレイブック!

ー今回の本の制作にあたっては、掲載したい各神社にご自身で1社1社許可を取られたそうですね。

 

正直、『お線路さん』の制作は苦行の連続でした(笑)今回の『お線路さん公式プレイブック』は、企画や構成、デザインは僕の方で進める事が出来ましたが、山手線のトリビア紹介に関してはJR東日本さん、神社のご紹介に関しては各神社さん、つまりそれぞれ独立した宗教法人31社を1社1社尋ね歩き『お線路さん』の主旨と説明、参加承諾と掲載許可をとっていきました。各神社1時間~2時間かけて丁寧に、そして熱く説明していきました。


―神社の皆様は今回の企画に関してどんな反応だったのですか?

 

ありがたいことに、非常に面白がってくれる方が多かったです。神職は日々のお勤めがある中で、自分たちで新しい企画を立てるのは難しい。特にお線路さんのような、複数の神社を巻き込む企画を立てるのはより難易度が非常に高いのです。なので僕のような第三者で、かつ宗教を多少なりとも理解している人間が企画を進めることについては、好意的に受け止めてもらえました。とはいえ、神社さんも企画なら有象無象どんな企画でもいいというわけでは無いので、やはりその点は信頼が何より大事。僕自身が真剣に企画を説明しにいくことはもちろん、神社さんから別の神社さんを紹介をしてもらって…という形をとって、地道に31社繋がっていったという感じです。中には、神職がオマモニアとしての活動を知って頂いていて、そこでお話しがスムーズに進んだということもありました。

 

―まるでRPGのような制作秘話ですね。オマモニアとして築いた唯一無二のネットワーク、そして神社愛がある林さんだからこそ実現出来た企画だということが良く分かりました。

日本全国お線路さんプロジェクトへ

―今回は第一弾とのことですが、お線路さんの今後の展望について、教えてください。

 

今回の「山手線/神社編」をきっかけに、お線路さんを楽しんでもらう人を増やせたら、今度は大阪の「環状線」、京都や名古屋、九州へと。それに神社編だけでなく、寺院編もやりたいですね。僕自身もオマモニアとして全国津々浦々巡っていますが、「お線路さん」目的に日本人が日本を巡る一大ムーブメント、そして次の世代に残るムーブメントにしていけたらと思っています。

 

―最後に、「お線路さん」に興味がある人達へメッセージをお願いします。


 

普段から神社巡りに慣れ親しんでいる方だけでなく、どうしても叶えたい願いがある人、そしてもっと日本の素晴らしさを知りたい人にぜひチャレンジしてもらいたいです。皆様の、お線路さん道中安全と満願成就を祈念しています!

 

【制作者】林 直岳(オマモニア)について

本業はグラフィックデザイナー。オマモニアとして御守りの総数は4,300体(2022年4月現在。御守りの企画やデザイン、講演や展示など御守りを中心に社寺のブランディングにまで及ぶ。
デザイナー視点で、御守りや護符・縁起物をとらえ、御守りの素晴らしさや奥深さに興味を持ってもらい、神社仏閣に足を運んでもらうきっかけづくりとして活動中。著書『御守りの本』もワールドフォトプレスより販売中(残り僅か)。

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